1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

福岡伸一「できそこないの男たち」

  • 選書の理由
     福岡先生の物語性のある生物学の本は読んでて心地好いし,生命とは,生きるとは何なのかについての示唆を与えてくれる.要するにやる気を出したい時に読む本.
  • 書評
     とても面白い本だった.この本を読むと男と女というものの考え方が大きく変わると思う.読んだ印象としては利己的なメスとそれに従うオスというイメージだったが実際には進化の必然なのだったのだろう.この本に描かれていることが事実だとするならばこの人間が作り上げてきた社会は生物学的にいかにもおかしな構造をしていることになる.「働かざるもの食うべからず」という言葉もオスがメスに対して持っている生物学的な劣等感を社会的な優越感で補っただけのものに過ぎない.今世の中の人間の大半が価値があると思い込み,それに固執し他人を蔑んでいるものなど本来は無価値で,大昔のメスから見れば嘲笑したくなるようなものばかりだろう.反対に今は奴隷のようにこき使ってきたオスが作り上げたこの砂上の楼閣のような社会に価値を感じ,妬んでいることの方が本来はおかしいのだ.
  • メモ
     相変わらず生物学の最先端の話が描かれているはずなのにどこか物語性があってとても読みやすい.いつしか現実の話なのかSFなのかわからなくなってしまいそうな感じさえする.
     歴史は司馬遼太郎先生,そして生物は福岡伸一先生に,その必然性から教えてもらいたかった.事実を並べるだけでなく事象の根元から一連の物語として読んでいく事実はなぜこうも面白くて人を惹きつけるのか.