1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

西尾維新「余物語」を読んだ

 長い...久しぶりにまっとうな怪異が出てきたような気がしますが,昔ほどやり取りに敏捷性や面白さを感じなくなってただただまどろっこしい文章に見えてきた.ストーリーが展開しないままどうでもいい思考が明文化されているだけだからイマイチ面白くない.そしてシリーズが多くなってきてすでに前の刊までの話しを覚えていない..

司馬遼太郎「真説宮本武蔵」を読んだ

 ひさしぶりに読んだ司馬作品.タイトルの「真説」にあるとおりバガボンドで知ってる宮本武蔵とは似ても似つかない宮本武蔵が描かれていた.吉岡兄弟が本来はいなかった説とか伊織がこれだけ重要な人物だったことに驚いた.  印象に残ったのは「軍学」に関する記述.軍学は虚学であり実際の戦の際にはまるで役に立たないと認識されていたというのは現在のA.Iブームと実際に企業に蓄えられているデータの関係性に非常に似ている.

伊坂幸太郎「シーソーモンスター」を読んだ

リレー形式小説の一部らしいが伊坂先生の小説は出た瞬間に購入して読んでいるので関係なく読了.内容的には前作の「フーガはユーガ」にやや似たところがあるSFカルトチックな2人の登場人物の関連性を描いた作品だった.2つの作品からなる短編集と捉えることもできるが通常よりも分厚い本で2冊分になってる感じ.1作品目は1980年代のバブル期の話,2作品目は現在からほんの少し未来の話.先に「夏への扉」を読んでいたせいか,これも後数年経った時に読み返すと昔は変なこと考えてたんだなぁと思うような内容に感じてしまった.ニュースは報道されたものが実際に起こったものなのかは判別がつかなくなるというのは確かにそのとおりかもと思ったが,人工知能が賢くなりすぎて人間を対立させる方向に誘導していくというのはいささか夢物語かなと思った.

ロバート・A・ハインライン「夏への扉」を読んだ

一万円選書の一冊を久しぶりに読み終えた.1970年代に描かれた小説なので30年後を想像するとこんな感じに想像されるんだなぁとその30年後がとっくに過ぎ去った現在では不思議な感覚になった.現在の感覚で読んでしまうとやすいSFだなぁとしか思えないが,1970年代に描かれたと言われるとそれなりに思うところがある.何しろPCが出てこない.出てくるとしても直接は描かれていないがおそらくマイコン的なものだと思う.家政婦ロボットの制御機構として.後は色々学習させればうまく動くようになるといった描画もあるが,強化学習的な話しというよりはルールを構築していって賢くする的なニュアンスのように感じた. いずれにせよ今読むと若干の安っぽさのする内容ではあった.

アルフレッド・アドラー「生きる意味」を読んだ

途中から飛ばし読みして,最後の章で「生きる意味を問うことは,人間と宇宙の関連に着目した場合にのみ,意味と価値があります.」と冒頭に出てきたところで読むのやめた.他の研究者の主張の誤りを必要以上に記載していて読みにくい上に,人はそんなに単純じゃないだろうと思えるような型分類をそこへの押し込みがきつくてイマイチ説得力に欠ける.

福岡伸一「フェルメール 光の王国」を読んだ.

スマートニュースで紹介記事を見たので読んでみた本.フェルメールだけでなくレーウェンフックとの絡みが福岡先生の信じる仮説とセットで紹介されている.福岡先生の他の著書でも語られている内容は多いけれど,それぞうれの作品が飾られている美術館のキュレーターの話が盛り込まれており,美術品っていうのは単に絵の素晴らしさだけではなくて画家や絵画自体の歴史も知っていると奥行きが出てくるんだなと改めて思わされた.それにしてもこの本と先に読んだ「フェルメール 隠された次元」で初めてフェルメールの作品を絵で全て観たが,その精密さに驚かされた.全体を観れば絵だとわかるけれど,細部だけ観たら写真と見間違うこともありそう.特に「取り持ち女」の右側に描かれている瓶などは光の反射具合など本物にしか見えない.

福岡伸一「フェルメール 隠された次元」を読んだ.

 スマートニュースのキュレーションで流れてきたので購入.本当は前作「光の王国」を買うつもりだったが見つからなかったのでこちらを読んだ.というのは嘘でタイトルうろ覚えで書店に行って買ったらあとから違う本だったことに気づいた.  購入経緯はさておき面白い本だった.福岡先生は相変わらず文章が上手いと思うのと自分の探究心とか感性に非常に素直だと感じさせられる.フェルメール作品に対する想いなど文章で読まされるこちらとしてはちょっと異常だなと感じてしまうほど.  この本で一番おもしろかったというか印象に残ったのは福岡先生のフェルメールに対する解釈で,フェルメールは世界をとても平等に観る科学的にすぐれた目を持っていたというもの(勝手な意訳).何かを解き明かしたい,何かを知りたいという科学的なマインドは常に持っておきたいものだと思った.というかそういうマインド持って何かに没頭するのはとてもおもしろいので何か没頭できるもの見つけたいなと思った.