1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

本多孝好「WILL」2回目

※ネタバレ注意
泣きながら3回目のMOMENTをなんとか読み終えたので今度は続編「WILL」の2回目。

  • 読中メモ

    • 森野のいう絶情はもしかしたら、やり場のない喪失感・悲しさ・虚しさ・不安とか全部入り混じったもので、泣くことすらできない、とにかく何をしても消えてくれそうにない漠然とした情状のことかもしれないなぁと思った。もしその情態のことならもうどうしようもない、泣けるなら積極的に泣きたいヤツだわ。それすらできないからただじっとしてその情態が消え去ってくれることを待つしかない。
    • 神田くんがアメリカに行っちゃってるから全般的に森野のストーリィか。
    • モリノの下2文字をとってリノちゃんか、めっちゃ可愛い呼び方やんけ。
  • 読後感
    MOMENTは神田の目線なのでこのWILLは森野、というか未来の目線。森野がMOMENTの時とは違ってとても弱い人物として描かれているし、神田はとても頼り甲斐のある人物として描かれている。お互い逆の立場から見るとこうも見え方が違うのかと思えてとても面白い。以前は物理的に近くにいることが当たり前だった二人が、時を経て精神的に近くなった代わりに物理的には遠くなった。この違いが神田と森野の描写を変えているのだろうか。いずれにせよ、神田目線では神田自身がとても頼りなく感じ、森野目線では森野自身がとても頼りなく感じた。自身の目から見る自分は弱く、他人は強く見える、そんな人物描写だった。

WILL

WILL

本多孝好「MOMENT」3回目

※ネタバレ注意
1000冊以上読んできた中でも1、2を争うぐらい好きな本。最初に読んだ時は感動して虚脱感しかなかった。帯にはミステリィって書いてあるけど純文学な気がする。今誰かにおすすめするならこの本かな。果たして3回目の読後感や如何に。

  • 読中メモ

    • “さりげない風を装いながら"、"さりげないふう"か、この本の雰囲気からすると"さりげないかぜ"って読んでもおかしくない感じが、主人公の描写からは読み取れた。
  • 読後感
    今回で3回読んだけど、良さは全く変わってなかった。第2章は儚く・切ない感じがして、第3章はとてもとても悲しくて涙が出てきて、第4章は切なくなりながらも心が温まった。主人公の神田くんは大学生で多分東大あたりの学生で、会話もウィットに富んでいて自分をメタ認知できている人物として描かれている。いろんな人との会話も一つ先を読んでいるものばかりで知性を感じさせる。そんな彼が死んでほしくないと思った人を助けるために、最後の最後頼ったのは理屈や論理ではなくて自分の気持ちを素直に相手にぶつけることだった。もちろんただぶつけるだけではなくて用意周到に色々準備はされていたけど、その論理的な思考の上にさらに感情が乗っけられていて非常に心打たれるラストだった。また時間あけて読み直そう。

MOMENT

MOMENT

三砂ちづる「死にゆく人のかたわらで」

※ネタバレ注意
神保町の三省堂で偶然目についた本。ちょっと立ち読みしたら目次に感じるものがあったので購入してみた。

  • 読中メモ

    • “人の記憶は三世代で失われる。"なんと今の時代、祖母、母と母乳で育てられなかった世代の女性は母乳が出にくくなっているとな。にわかには信じられない…家で最期を向かえる人が少なくなってるってのはそんな感じするなぁ。祖父も祖母も病院で亡くなちゃったし…でもだからといって今一度自宅でなくなる文化を復活させる必要があるかどうかは疑問。それと引き換えにまだ自分たちが文化とすら認識していないものが今芽生えているんだろうし、人間の生活ってずっと変遷していくものだと思う方が自然なんじゃないかな。
    • さっき読んでた本多孝好の「dele」が急に思い出された。"悲しい"と感じていることが端から見てわかるような状況の人でも決して"かわいそう"ではないんだよね。この本読み進めてたら突然思い出した。
    • ⭐︎第4章を読むことができませんでした。この章では亡くなった旦那さんの元々の病気についての詳細な記述がありましたが、なぜか昔から人が外科手術をした話を聞くと血の気が引いて貧血状態になって倒れてしまうのです。今回も途中まで読んでその傾向が出たので飛ばす。昔乙一の「失われる物語」を読んで以来の貧血状態になるところだった…
    • “がん治療は保険の効かない先進医療などを試そうとするからお金がかかる” なるほど、そういうもんか。
    • “いまは将来のためにある時間ではないのに。”
    • “夜中に何度も起き上がって、じっとしていられないこともあった。” これ、昔アトピーがひどかった頃、かゆい皮膚を掻きむしってしまった後の痛みみたいなものかもしれないなぁ、寝ようと思っても掻いた部分がパジャマや布団にあたるたびに痛みが走ったり、痒くなったりしてとても横になっていられなかった。イライラするし、寝られないから焦るし、家族は誰も理解してくれなかったし、今思いだすだけでも地獄のような日々だった。
    • そうだ、うちの父親も祖父が亡くなった時、延命治療はしなかった。。
    • “親として、この時期にこの経験をわたしたちにさせてくれたことの意味は実に大きかった。” 親は人生の先輩、いつまで経っても親から学ぶものは大きいな。
    • “失ってしまったのは「どうでもいいこと」を共有する人。”
    • “でも、死ぬのが今日だ、とは決して思っていなかったと思う。”
  • 読後感
    タイトル通りとても重かったけど、とてもいろんなことを考えさせられる本だった。生まれ、生きて、死んでいく、この連鎖の中で子供の誕生を見て学び、親の死を見て学んでいくのか。親子・世代のつながりを改めてなのか、むしろ初めてぐらい考えさせられたなぁ。

本多孝好「dele」

※ネタバレ注意
MOMENT、WILL、MEMORYこの先生の作品はとても切なくて、読んでいると手が震えてくるぐらい心に響く。誰かにオススメの本を聞かれたらまずはMOMENTを紹介することにしています。この本もとても楽しみ。

  • 読中メモ
    一気に読み終わってしまった…

  • 読後感
    読み終わって、もっと登場した人物のことが知りたいと思う作品は少ない。でもこれはそんな一冊だった。「ストーカー・ブルーズ」は心に響くものがあった。コミュ障で人と話すことがままならない人、言葉を発する前に色々考え込んでしまって中々会話ができない人、そんな人が勇気を出して人と話す、コミュニケーションを取ろうとする事は、他の人から見れば当たり前なんだけど、その人達からすればものすごく重大な事なんだということが見事に描かれていたと思う。「ドールズ・ドリーム」はこの本の中で一番感銘を受けた。
    幼い娘と夫を残して先に逝かなければならない人が残して言ったもの。生前はわからなかったけど、逝ってしまった後にその意味がわかって、生前の故人の想い、意思をそこに感じるのはなんともいえない喪失感を僕の心の中に生んだ。"MOMENT"にも同じように心にこんな風に心に穴を空けられるシーンがあって今回はそれとオーバラップした。留守電のシーンなんか今思い出しても泣きそうになる。MOMENTももう一回読みたいけど虚脱感がすごいと思うからもうちょっと心が健全な時にしよう…

dele ディーリー

dele ディーリー


MOMENT

MOMENT

 

東野圭吾「むかし僕が死んだ家」2回目

※ネタバレ注意
この作品は僕に本の面白さを教えてくれた。今から10数年前、まだ大学生だった頃、当時一年に一冊読むか読まないか程度でどちらかといえば漫画の方が購入量が多かった。そんな時、気まぐれで入った本屋で本当に偶然、タイトルが目に留まって購入した。あの日以来、本を読まなかった日は数える程しかない。それぐらい本にのめり込んだ。
そんな本を今から読み返してみる。ちょっと怖いけど、楽しみ。

  • 読中メモ

    • エピローグ読んだだけでなんかいきなり実家が懐かしく思えてきた。
    • “御厨"はさすがに初見じゃ読めないだろう
    • 決定的な表現があって、重すぎてちょっとこのまま読んでいられないし、言葉としてかなり強いなと思った。
    • あったはずのドアがない、、か。建築学科の先生・学生がたくさん出てくる森博嗣先生の本の登場人物たちなら空間的に奥に部屋があることぐらい見抜いちゃうんだろうなぁ。と思ったら、別の家オチだった。
    • 山の中にある家の玄関に船の絵が掛けられているのに違和感を感じる、、、こういう感覚に乏しいなぁ
  • 読後感
    2回目のハズなのに読んだ後の震えが止まらない。最初に読んだ時もこんな読後感だっただろうか。。。いや、もっと強烈だった気がする。だからこそ20年以上経った今でも読書がやめられないくらいだから。途中まではシンプルなメッセージ性を感じてたけど、最後は強烈だった。

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

森博嗣「四季・冬」複数回目

※ネタバレ要注意
四季シリーズ「冬」もう何回読んだか忘れた。X、G、Wと一気に、そして少し前に百年シリーズを読んだこともあってここはぜひ四季シリーズを読まなければならないと勝手に感じた。というか僕はS&Mシリーズから入った口なんで主人公はいつまでも犀川と萌絵だったんですが、さすがにここまでくると主人公は真賀田博士に補正されつつある。博士に脳の構造を変えられた気分、、、とか言ったら贅沢すぎるか。

  • 読中メモ

    • 章立て見ていきなりビビった。魔法の色かよ。
    • エピローグに色々詰まっている。犀川先生が登場していたことも忘れていたし、何よりも質問内容が良いなぁ。
    • 「では、明日までは生きていよう。失礼する」
    • “あらゆる問題が、そうだった。彼女だけがそれを問題にしている”
    • ウォーカロン、パティ、、、マジで!?ヴォッシュ博士は。。。
    • 思い出したよ、新田…、じゃないクジ・アキラか、百年シリーズだ。大好きな百年シリーズだった。クジ博士か。
    • 四季とサエバ・ミチルの関係はWシリーズの世界ではすでに多くの人間が持ち合わせていない概念だろう。四季は自分が持っているその感情を人類から消してしまうことも計算に入れていたのだろうか。それとも人類すら必要とは思っていないというならそんなことすら考えなかっただろうか。自分の子孫を思う気持ちとは明らかに矛盾している。
    • あ、パティはパトリシアだった。ヴォッシュ博士とは無関係か。
    • そうか、Gシリーズで犀川は禁煙していたな。真賀田博士が死んだと認識したのだろうか。
  • 読後感
    “今は冬、彼女はそれを思い出す。"最後のこの一文だけでこの本は十分だった。色々なところに時間と思考が飛んで行って、もう過去に数回読んだ時のことはすっかり忘れてしまって、最後の出口が百年シリーズだったかなとも思ったけど、舞い戻ってきたのはS&Mシリーズだった。改めて感じることとしてはこのV S&M G X W 百年 四季シリーズは壮大すぎて飛ばし飛ばし読んでると追いつけないですね。GとWが完結したら5周くらい読み込んでみたい。もしかしたら完結する頃にはスカイ・クロラシリーズとも繋がってきたりするのかな。それはそれでとても楽しみですね。

四季・冬 (講談社ノベルス)

四季・冬 (講談社ノベルス)

森博嗣「青白く輝く月を見たか?」

※ネタバレ注意
Wシリーズ最新刊 この巻を読むために前作までの5巻を一気通貫で全部読んだ。いざ尋常に勝負。

  • 読中メモ

    • “天井"と"天丼"をいつも見間違う。前後のコンテキストから先入観を受けていないとポジティブに捉えておく。
    • ナクチュのリーダであるカンマパの先祖、絞殺された若い男性、、、百年シリーズで殺された王子かな。。あれはアンドロイドだったっけ?ウォーカロンだったっけ??
    • 一度の実績で次も同じことを期待される事に対する悲観的な考え方、人工知能は確率論で考えるのである意味ドライだが、人間はどうしてもネガティブにならざるを得ない、それは期待に答えられないことへの不安感だろうか、それとも信頼を失うことへの危機回避だろうか。いずれにせよストレスになることは変わりがない。
    • 人間xウォーカロンx人工知能xトランスファ プレイヤが段々増えてきた。今のところ人工知能とトランスファは上下関係で括れるかな。
    • 登場人物欄にフーリが2人出てきたのはそういうわけか。なんかこれまでとは違う面白みが出てきた。
    • ずっと学び続ける人工知能か、、、処理速度は早いしメモリが劣化しないところが人間よりも優れているところですね。自律学習する人工知能が登場した暁には時間に対する価値が人間とは大きく異なるということか。人類が時間をかけてゆっくり、世代を超えて学習してきたものを人工知能は何倍ものスピードで学び終える。でもその先がないな。。
    • そういえばあのアフリカの地下施設にあった水槽はなんだったんだっけ?北極基地の描写で思い出した。
    • 「そうかぁ」小さい"ぁ"が、ウグイのセリフだと思うとそこはかとなく可愛いと感じる。シリーズ最高のデレだな。
    • オーロラ、北極のはるか深海に沈んだ人工知能原子力潜水艦を母体として内部にロボットを取り込んでいる。。。人間の構造そのものだね。ロボットがいなければ部品の修理ができずにもっと早くに壊れていたかもしれない。これは細胞を純粋にしてしまった人間が生殖機能を失ったことの暗喩か。
    • ハギリ博士の興奮の仕方、、普段と様子が変わる感じは犀川先生と同じだ。ただ犀川先生は暴れている一番暴力的な人格を完全に表面に出さない術を身につけていたのに対して、ハギリ博士はちょっとだけ顕在化している。
    • 「では、単なる偶然ですか?」「偶然です。」
    • 「わからないからです」-> 神様わかりませんでした
  • 読後感
    一気に読んでしまった。まぁその予感はあったけど。なんかこの巻である程度全体像が見えてきたような気がするけど、まだ続きがあるのか。マガタ博士の限界まで描写されてるけど、あれは本物じゃなくてサブセットってことなのかな。全体的には根拠の部分を除いた論文を読んでいるような感覚になった。ソフト的な人工物である人工知能とハード的な人工物であるウォーカロンと自然の産物、人間のもっともらしい未来像が見えているような感じだった。あと少し気になったのは四季シリーズの冬は時系列的にどのあたりなんだろうか。読み返そうかな。そしてスカイ・クロラシリーズは世界線の向こう側なのかな。