1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

本多孝好「dele」

※ネタバレ注意
MOMENT、WILL、MEMORYこの先生の作品はとても切なくて、読んでいると手が震えてくるぐらい心に響く。誰かにオススメの本を聞かれたらまずはMOMENTを紹介することにしています。この本もとても楽しみ。

  • 読中メモ
    一気に読み終わってしまった…

  • 読後感
    読み終わって、もっと登場した人物のことが知りたいと思う作品は少ない。でもこれはそんな一冊だった。「ストーカー・ブルーズ」は心に響くものがあった。コミュ障で人と話すことがままならない人、言葉を発する前に色々考え込んでしまって中々会話ができない人、そんな人が勇気を出して人と話す、コミュニケーションを取ろうとする事は、他の人から見れば当たり前なんだけど、その人達からすればものすごく重大な事なんだということが見事に描かれていたと思う。「ドールズ・ドリーム」はこの本の中で一番感銘を受けた。
    幼い娘と夫を残して先に逝かなければならない人が残して言ったもの。生前はわからなかったけど、逝ってしまった後にその意味がわかって、生前の故人の想い、意思をそこに感じるのはなんともいえない喪失感を僕の心の中に生んだ。"MOMENT"にも同じように心にこんな風に心に穴を空けられるシーンがあって今回はそれとオーバラップした。留守電のシーンなんか今思い出しても泣きそうになる。MOMENTももう一回読みたいけど虚脱感がすごいと思うからもうちょっと心が健全な時にしよう…

dele ディーリー

dele ディーリー


MOMENT

MOMENT

 

東野圭吾「むかし僕が死んだ家」2回目

※ネタバレ注意
この作品は僕に本の面白さを教えてくれた。今から10数年前、まだ大学生だった頃、当時一年に一冊読むか読まないか程度でどちらかといえば漫画の方が購入量が多かった。そんな時、気まぐれで入った本屋で本当に偶然、タイトルが目に留まって購入した。あの日以来、本を読まなかった日は数える程しかない。それぐらい本にのめり込んだ。
そんな本を今から読み返してみる。ちょっと怖いけど、楽しみ。

  • 読中メモ

    • エピローグ読んだだけでなんかいきなり実家が懐かしく思えてきた。
    • “御厨"はさすがに初見じゃ読めないだろう
    • 決定的な表現があって、重すぎてちょっとこのまま読んでいられないし、言葉としてかなり強いなと思った。
    • あったはずのドアがない、、か。建築学科の先生・学生がたくさん出てくる森博嗣先生の本の登場人物たちなら空間的に奥に部屋があることぐらい見抜いちゃうんだろうなぁ。と思ったら、別の家オチだった。
    • 山の中にある家の玄関に船の絵が掛けられているのに違和感を感じる、、、こういう感覚に乏しいなぁ
  • 読後感
    2回目のハズなのに読んだ後の震えが止まらない。最初に読んだ時もこんな読後感だっただろうか。。。いや、もっと強烈だった気がする。だからこそ20年以上経った今でも読書がやめられないくらいだから。途中まではシンプルなメッセージ性を感じてたけど、最後は強烈だった。

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

森博嗣「四季・冬」複数回目

※ネタバレ要注意
四季シリーズ「冬」もう何回読んだか忘れた。X、G、Wと一気に、そして少し前に百年シリーズを読んだこともあってここはぜひ四季シリーズを読まなければならないと勝手に感じた。というか僕はS&Mシリーズから入った口なんで主人公はいつまでも犀川と萌絵だったんですが、さすがにここまでくると主人公は真賀田博士に補正されつつある。博士に脳の構造を変えられた気分、、、とか言ったら贅沢すぎるか。

  • 読中メモ

    • 章立て見ていきなりビビった。魔法の色かよ。
    • エピローグに色々詰まっている。犀川先生が登場していたことも忘れていたし、何よりも質問内容が良いなぁ。
    • 「では、明日までは生きていよう。失礼する」
    • “あらゆる問題が、そうだった。彼女だけがそれを問題にしている”
    • ウォーカロン、パティ、、、マジで!?ヴォッシュ博士は。。。
    • 思い出したよ、新田…、じゃないクジ・アキラか、百年シリーズだ。大好きな百年シリーズだった。クジ博士か。
    • 四季とサエバ・ミチルの関係はWシリーズの世界ではすでに多くの人間が持ち合わせていない概念だろう。四季は自分が持っているその感情を人類から消してしまうことも計算に入れていたのだろうか。それとも人類すら必要とは思っていないというならそんなことすら考えなかっただろうか。自分の子孫を思う気持ちとは明らかに矛盾している。
    • あ、パティはパトリシアだった。ヴォッシュ博士とは無関係か。
    • そうか、Gシリーズで犀川は禁煙していたな。真賀田博士が死んだと認識したのだろうか。
  • 読後感
    “今は冬、彼女はそれを思い出す。"最後のこの一文だけでこの本は十分だった。色々なところに時間と思考が飛んで行って、もう過去に数回読んだ時のことはすっかり忘れてしまって、最後の出口が百年シリーズだったかなとも思ったけど、舞い戻ってきたのはS&Mシリーズだった。改めて感じることとしてはこのV S&M G X W 百年 四季シリーズは壮大すぎて飛ばし飛ばし読んでると追いつけないですね。GとWが完結したら5周くらい読み込んでみたい。もしかしたら完結する頃にはスカイ・クロラシリーズとも繋がってきたりするのかな。それはそれでとても楽しみですね。

四季・冬 (講談社ノベルス)

四季・冬 (講談社ノベルス)

森博嗣「青白く輝く月を見たか?」

※ネタバレ注意
Wシリーズ最新刊 この巻を読むために前作までの5巻を一気通貫で全部読んだ。いざ尋常に勝負。

  • 読中メモ

    • “天井"と"天丼"をいつも見間違う。前後のコンテキストから先入観を受けていないとポジティブに捉えておく。
    • ナクチュのリーダであるカンマパの先祖、絞殺された若い男性、、、百年シリーズで殺された王子かな。。あれはアンドロイドだったっけ?ウォーカロンだったっけ??
    • 一度の実績で次も同じことを期待される事に対する悲観的な考え方、人工知能は確率論で考えるのである意味ドライだが、人間はどうしてもネガティブにならざるを得ない、それは期待に答えられないことへの不安感だろうか、それとも信頼を失うことへの危機回避だろうか。いずれにせよストレスになることは変わりがない。
    • 人間xウォーカロンx人工知能xトランスファ プレイヤが段々増えてきた。今のところ人工知能とトランスファは上下関係で括れるかな。
    • 登場人物欄にフーリが2人出てきたのはそういうわけか。なんかこれまでとは違う面白みが出てきた。
    • ずっと学び続ける人工知能か、、、処理速度は早いしメモリが劣化しないところが人間よりも優れているところですね。自律学習する人工知能が登場した暁には時間に対する価値が人間とは大きく異なるということか。人類が時間をかけてゆっくり、世代を超えて学習してきたものを人工知能は何倍ものスピードで学び終える。でもその先がないな。。
    • そういえばあのアフリカの地下施設にあった水槽はなんだったんだっけ?北極基地の描写で思い出した。
    • 「そうかぁ」小さい"ぁ"が、ウグイのセリフだと思うとそこはかとなく可愛いと感じる。シリーズ最高のデレだな。
    • オーロラ、北極のはるか深海に沈んだ人工知能原子力潜水艦を母体として内部にロボットを取り込んでいる。。。人間の構造そのものだね。ロボットがいなければ部品の修理ができずにもっと早くに壊れていたかもしれない。これは細胞を純粋にしてしまった人間が生殖機能を失ったことの暗喩か。
    • ハギリ博士の興奮の仕方、、普段と様子が変わる感じは犀川先生と同じだ。ただ犀川先生は暴れている一番暴力的な人格を完全に表面に出さない術を身につけていたのに対して、ハギリ博士はちょっとだけ顕在化している。
    • 「では、単なる偶然ですか?」「偶然です。」
    • 「わからないからです」-> 神様わかりませんでした
  • 読後感
    一気に読んでしまった。まぁその予感はあったけど。なんかこの巻である程度全体像が見えてきたような気がするけど、まだ続きがあるのか。マガタ博士の限界まで描写されてるけど、あれは本物じゃなくてサブセットってことなのかな。全体的には根拠の部分を除いた論文を読んでいるような感覚になった。ソフト的な人工物である人工知能とハード的な人工物であるウォーカロンと自然の産物、人間のもっともらしい未来像が見えているような感じだった。あと少し気になったのは四季シリーズの冬は時系列的にどのあたりなんだろうか。読み返そうかな。そしてスカイ・クロラシリーズは世界線の向こう側なのかな。

森博嗣「私たちは生きているのか?」2回目

※ネタバレ注意 Wシリーズ2周目 それなりに内容覚えてるけどせっかくだからこれ読んでから最新刊に取り掛かる。

  • 読中メモ
  • だんだんデボラが攻殻機動隊タチコマとかロジコマに見えてきた。見えてないか、読めてきた?感じられてきた?思えてきた?
  • デボラとフーリが作っている卵とはまた概念が違うものなのだろうか。目的が少し違うだけで仕組みは同じ気がする。
  • “研究なんてだいたいそんなものです。自分では信じて突き進んでいるけど、あっさり消えてしまうことがある。" そうか、最近仕事がうまく行ってない気がしているのは進んでないからかもしれないなと思ったとか、思わなかったとか。
  • 自転車乗りなのに恰幅の良い中年男性、しかも金髪か、誰だろう。
  • 感情の存在から生きている理由を考える、とても面白い思考アプローチだと思った。
  • “心にもないことを言葉にできるようになって、僕も数十年になるのだ。" 助教授になって会議に出てるときの犀川先生みたいだな。「有限と微小のパン」だったか萌絵が牧野を評して、"当たり前のことを言葉にできる人は優しい"みたいなこと言ったのがいつも対比で思い出される。もう一つ連想されるのはGシリーズで加部谷が萌絵だか海月だかに評されて"関連ない話題でも次々出せるのは才能だ"みたいなのがある。どれも曖昧な連想だから正確じゃない気がするけど。 "僕たちは、もともと、そういう無駄なゴミに満ちた世界に生まれたのだ"人工知能研究をしている先生が言っていたけど、ゲームな仮想環境で人工知能や実際のシミュレーションは環境が綺麗すぎて意味がないんだとか。結局、現実に役に立つものを作るためには、多すぎるノイズをいかに除去できるかの方が重要らしい。これはデータ分析を正確に行おうと思ったら、実際に分析・解析している時間よりもデータを前処理するのに時間がかかるし、有益な知見は分析方法よりも適切な前処理の技術の方にあるという現実に非常にリンクしている。

  • 読後感
    感想を一言だけ述べるなら"面白かった"。前にも書いたかもしれないけど、森先生の作品で面白いと思うのは、人の思考(本シリーズではハギリ博士の思考)が描写されているところだと思う。それは一連の仮説から推論そして結論に至る道筋ではなく、途中で思考が発散してしまい解にたどり着かない思考や、ただぼんやりと人間とな何か、みたいな抽象的で答えがないものに対する思考の描写で時に感情が入ったりしているところが特に面白い。自分が大学生だった頃には特に自分がそれまでにぼんやり考えていたことが明文化されていて、つまり似たようなことを考えている人がいることがわかって、非常に興味を持ったが、最近ではまた違った角度で面白みを感じているように思う。これは今のところ言葉にできない感情に近いものだけど。

森博嗣「デボラ、眠っているのか?」2回目

※ネタバレ注意
Wシリーズ2周目 今まで各巻3ヶ月ぐらいのスパンを開けて読んでいたのでそれぞれ別の場所での話かと思ってたけど、結構前巻、前々巻は同じ場所だったし実は百年シリーズの舞台だったしと新たな発見が多くて驚き。

  • 読中メモ

    • 前巻でハギリ博士の研究していたパラメータの同定は12個ほぼ出尽くして完了したはずなのになぜまだ狙われるんだろうか。論文発表がまだ終わっていなくて敵対勢力からしたら脅威として認識されている状態なんだろうか。そのへんが人類の情報の伝達速度の限界なんだろうなぁ。
    • 待てよ百年シリーズ後の世界だとしたら、護衛で持ってる銃とか敵が持ってる銃なんか一度ロックしたら音声で反応して撃っちゃうんじゃないか。敵の銃奪うとか危なすぎる。
    • “(略)まあ、たしかに、それを入れるときの虚しさはあるかもしれない、とも思った。" 虚しさって単語が出てくるあたり百年シリーズとのつながりを感じる。"あなただけが生の虚しさを知っている”(虚覚え)
    • 百年シリーズ第3巻「赤目姫の潮解」の話はもしかしてトランスファか。あれもしかして人間じゃなくて自律分散して分裂したデボラ同士の話だったのか??
    • スットパか、人間のストッパは期限があること、すなわち死だろうか、それとも神の概念だろうか、とか思ったけど兵器として作られたわけじゃなければそもそもストッパが不要ですね
    • やっぱ赤目姫の正体はデボラかなぁ、目が赤いのは赤外線センサだったからか。ということはこのWシリーズと百年シリーズは時系列的に交差してんのか。
    • “そう、偶然だ。そんなものに頼るのは、人間だけだ。”
  •  読後感
    生きているとはどういうことか、生命とは何か、について非常に示唆に富んでいて面白かった。特に人間は人工物に近づき、人間が作った人工物が人間に近づいてくる過程での両者の対比から生命を考えさせられるところが、非常に興味深い。大抵の物語は人間が機械化していたり、機械が人間化する葛藤を描いているが、この物語はそのどちらでもなかった。こういう物語を読むと改めて人間の行為の無駄・無意味さが認識されて、人間らしさを思い出せる。

森博嗣「風は青海を渡るのか?」2回目

※ネタバレ注意
Wシリーズ2周目 タイトルだけだと内容全く思い出せない。読んだら何が出てくるか楽しみ。

  • 読中メモ

    • 「君のそういうところが、私は好きだ」自分が他人に対して好きになれるところを認識できるようになりたいな。それを言葉に出すかどうかは別として。でももしかしたら感覚的に合うにとにはそういうところを感じているのかもしてれない。表現的に"好き"という言葉を連想できていなだけで。直感的に合うと感じる部分を認識して"好き"と表現できたら、もう少し理想的な人間になれるかな。
    • 「ハギリ博士にわからないのなら、誰にもわからない」
    • 「エントロピィ的に考えても、存在自体が矛盾ではないか。違うかね?」
    • “見蕩れてしまった" 久しぶりに漢字でみた。化物語読みたくなってきた。戦場ヶ原蕩れ〜。
    • そうか、S&M、V、X、Gときてそれから百年シリーズとも繋がってるのか。 「目にすれば失い、口にすれば果てる」百年シリーズの方が時系列的には前っぽいな。
    • 太古の人間は人間以外にも意識が宿っていると考えた。。。それが科学の発展によって数式で解明できるようになったから意識はないと。。。。ではもし人間の思考・行動が数式で表現できるようになったら、人間は意識を失った事になるのか、それとも自然全てが意識を持っているという事になるのか。。
    • “一方、人間の方が発想力があり、インスピレーションに長けている。これは、思考が集中せず、その散漫さから生まれる発想がある、ということだ。" ここ読んでる時に突然Xシリーズで小川さんが布団巻にされて二階から落とされたの思い出したのも集中力の散漫さが生み出す産物だろうか。あれはサイタxサイタだったかなぁ。ウグイが毒味をするようにサラダを食べたこともインスピレーションの要因かもしれない。
    • ヤベェ、カマンパ・デボラ・スホだったわ。ちょっと鈍ってる。百年シリーズから100数十年後の世界か。
    • “忘れる"ということ、これがこの本のテーマかな?違うか。忘れるというよりも脳の遊びの部分か。
  • 読後感
    ハギリ博士の思考へのダイブとかヴォッシュ博士の言っていた美しい公式が現れる話とかすごく羨ましい。自分の仕事でもそんなこと起きないかな。大学生で研究してた時はたまにあったんだけど、もう10年ぐらい経験してない。アドレナリンが出まくって眠れなくなるぐらいの仕事したい。それからこのシリーズ、なんかドラクエチックな感じがしてきた。