1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

福岡伸一「動的平衡2」

  • 選書の理由
     福岡先生の著書はいつも内容的にはサイエンスなのに物語性に富んでいて読みやすいし,何かを考える上で非常に示唆的なことが多い.今回もそんな刺激を求めて読んでみる.
  • 書評
     いつも通り物語調で進んでいくサイエンスの本になっていた.これは出版された当時に読んでおけばなおのこと面白かっただろうなぁと思った.前巻「動的平衡」の記憶が若干は蘇ってきた,というか確かDNA,RNAという言葉の意味を正確に理解したのは「動的平衡」を読んでだった気が今更ながらにしてきた.そういった意味ではこの本の位置付けは動的平衡とは何かというよりもどちらかというと,社会に対する警告の要素が強くなっているように感じる.
  • メモ
     まえがきが既に本編かと思えるぐらい面白かった.短編の物語集を読んでいるような気持ちにさせてくれた.
     遺伝子がわずか4つのヌクレオチドで構成されているというなら将来的にコンピュータも{0,1}の2種類の信号ではなくて4種類にした方が色々都合がよくなるのかもしれんなぁと漠然と思った.

福岡伸一「できそこないの男たち」

  • 選書の理由
     福岡先生の物語性のある生物学の本は読んでて心地好いし,生命とは,生きるとは何なのかについての示唆を与えてくれる.要するにやる気を出したい時に読む本.
  • 書評
     とても面白い本だった.この本を読むと男と女というものの考え方が大きく変わると思う.読んだ印象としては利己的なメスとそれに従うオスというイメージだったが実際には進化の必然なのだったのだろう.この本に描かれていることが事実だとするならばこの人間が作り上げてきた社会は生物学的にいかにもおかしな構造をしていることになる.「働かざるもの食うべからず」という言葉もオスがメスに対して持っている生物学的な劣等感を社会的な優越感で補っただけのものに過ぎない.今世の中の人間の大半が価値があると思い込み,それに固執し他人を蔑んでいるものなど本来は無価値で,大昔のメスから見れば嘲笑したくなるようなものばかりだろう.反対に今は奴隷のようにこき使ってきたオスが作り上げたこの砂上の楼閣のような社会に価値を感じ,妬んでいることの方が本来はおかしいのだ.
  • メモ
     相変わらず生物学の最先端の話が描かれているはずなのにどこか物語性があってとても読みやすい.いつしか現実の話なのかSFなのかわからなくなってしまいそうな感じさえする.
     歴史は司馬遼太郎先生,そして生物は福岡伸一先生に,その必然性から教えてもらいたかった.事実を並べるだけでなく事象の根元から一連の物語として読んでいく事実はなぜこうも面白くて人を惹きつけるのか.

眉村卓「僕と妻の1778話 メモリアルセレクション52」

  • 選書の理由
     読書芸人で紹介していた本の内,一冊だけ読んでみたいと思えたので購入.番組で紹介されていたのは新書だったがどうも品薄で手に入りにくいようなのでこちらの文庫で我慢.噂では月末に買えるようになるんだとか...
  • 書評
     著者は1日一つ物語を描いたと言っているが,稀に著者自身の考え・思いがそのまま文章になっていてエッセイとおぼしきものもあった.最初の方はそうでもないが最後に向かうに連れて著者の疲れや不安が物語の登場自分を介して現れるようになりこの物語が描かれた目的を知って読むとなお一層感じ入るものがあった.特に最終回前の数話はすでに物語と現実がほぼイコールになっておりページをめくるのがためらわれるほどの感情が読み手に押し寄せてきた.そして最終回は最初に目を通した時にはなんのことかわからなかったが,もう一度じっくり読んでみてその意味がわかり,本を持つ手が震えた.
  • メモ

福岡伸一「生命と記憶のパラドクス」

  • 選書の理由
    福岡先生の苦労した実験話,研究中に思いつく仮説や生命というものに対する考え方をしると自然と自分もやる気が出るため久しぶりに読みたくなって,まだ読んでいない一冊を購入.
  • 書評
     これまで読んできた「動的平衡」などのように理系の固い話かと思ったら,エッセイ集のような本だった.これはこれで面白かったけどもう少し生命とは何かについて,福岡先生の研究内容や洞察が描かれているとよかったなと思った.
  • メモ
    やはり福岡先生の文章はそこらへんの小説家よりも小説家らしくて文学的だと思う. 科学的な本ではなくてエッセイ集のようだが,これはこれでとても面白い.まるで自分がそこに居るかのような感覚におちいった.特に閉店した店の話では自分が近くのマスが釣れる釣り堀で細い竹に糸と針がついただけの釣り竿で魚を釣っていたことを思い出した.あの頃の水の流れ,餌を針につける時の柔らかい感覚,独特の匂いまで思い出されてとてもアンニュイな気持ちになった.

「もの言えぬ時代」

  • 選書の理由
     複数の有識者の意見だったので、偏りは小さいだろうと思って試しに購入。
  • 書評
     共謀罪についての本だった。ほとんどの人が共謀罪に反対でとってつけたように賛成している人の意見が中頃に一つだけあった。それも絵に描いたようにうっすい理由で。ほぼ全員の意見を要約すると先の治安維持法と同じで、最初は一般人を取り締まるような法律ではなかったが、そのうち恣意的に解釈されるようになって政府に批判的な人間を片っ端から取り締まるようになるだろうと。きっとそうなるだろうなと思う。特に空気を読むことに敏感な日本人には相性が良い法律だろう。そうなってしまうような緊迫した世界情勢にならないことを切に願う。
  • メモ
     内田樹氏:一方的な批判ばかりで読む価値のある文章ではなかった。デメリットばかりを論って挙句の果てに"80年代のバブルは日本が主権国家としての地位を取り戻そうとしていたように思える"と妄言まで出てきた。もう少しまともな人かと思っていたがこの感情的な文ではもう二度と読むことはないかも。
     半藤一利氏:一番説得力がありもっとも読みやすい文章。感情的な文章にもなっておらず、自身の戦争体験から実際に自分が感じている危機感を率直に伝えている。

池田善昭 福岡伸一「福岡伸一、西田哲学を読む」

  • 選書の理由
     久しぶりに福岡先生の文章・思考に触れてみたくなって購入。
  • 批評
     ピュシスとロゴスという考え方について最後は時間という概念が今の自然科学からいかに無視されているかというのが腑に落ちる内容だった。ダイアローグ形式ということもあって内容的には福岡先生が理解しにくかった部分が詳細に書かれていたり、逆にすんなり理解された部分はさらっと書かれていたりとモノローグ形式に慣れている分理解に苦しむ部分もあったが、福岡先生の著作を何冊か読んでいた分理解はできたと思う。  科学における同時性、いわゆる分解と合成だ同時に起こって、一見静的に見える部分も実は動的に平衡状態にあるというのは今の科学の限界が見えた時に次のヒントになるものだと思ったし、今の仕事にも活かしていける考え方だと思った。  ただ福岡先生の対話相手の喋り方が宗教の信者っぽくてもう読みたくない。
  • メモ
     西田哲学は読んだことがないが、プロローグを読むだけで福岡先生の考える動的平衡と西田哲学には生命とは何かという考え方に非常に近いものがあることがわかる。
     ”林檎を理解するには分析的に見ていくのではなくて林檎そのものを経験する”見て、触れて、食べて、嗅いでとかそういうこと?肉体的経験みたいなことかな。林檎を経験した環境、その時の自分の状態までも含めて体験せよと。文字や絵、知識以上のものを?
     ”生きるという行為に必要な「先回り」”この考え方はアルゴリズムに応用できないだろうか。

森博嗣「ペガサスの解は虚栄か」

※ネタバレ注意

  • 選書の理由
     森先生のこのシリーズは無条件購入。このシリーズは人間とは何かを色々考えさせられるので非常に面白い。

  • 書評
     人工知能いが希望的観測をして演算から導かれる事実を見誤る。それを修正するために他の先輩人工知能が指導を行う。学習の速度、時間感覚が違うだけでこれもはや人間に近い。人工知能の行き着く先は今の人間とは時間サイクル、時間の価値観が違うだけで他の点では人間そのものになるのではないかと思ってしまう。そういった意味では結局人間が産み出せるものなど所詮人間のコピィに過ぎないのではないだろうか。

  • メモ
    • 「わからないのは、悪い状態ではない。」
    • 「ラビーナのロボットのこと。あんなことしなくても、彼女は立派に生きているのに」
    • "言いたい言葉はあったが、言わなければいけない言葉は一つも見つからなかった。"
    • 「その素直さが、私は好きです。」