1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

半藤一利「世界史のなかの昭和史」を読んだ

 主に大正時代の終わりから,ドイツ・ソ連・アメリカの動向と日本の歴史が描かれている.ただし各国の歴史を年表のように並べたものではなくある程度時代を集約しながら,当時の状況が調査されている.また大正末期から昭和初期の動静について世界史に目を向けた時の歴史的ターニングポイントの同時発生性や,現在の安倍内閣やトランプ政権などとの同一性が強調されているが,少し誇張的であまり信頼できるものではない.
 ただ当時の世論の雰囲気,当時の人がどういうことに関心を抱いていて,どういう判断を下したのかが単に歴史的事実だけでなくいわゆる"歴史の雰囲気"を調べた上で考察しているところが非常に面白い.この部分を読み取れれば,よく振り返らないと歴史というものは認識できないと言われている事実に対して,今現在進行中の歴史から未来を考察する力を養えるのではないかと思われる.それは多くの歴史書が時の首相や権力者など特定の人物の目線で書かれているのに対して,この書では随所に一国民の目線でその時,一般人がどんな情報を得ることができて情報を発信する側がどんな情報を発信していたかを描いているからだと思われる.この書を読んでいるとなぜ日本が太平洋戦争という無謀な戦争に国民総出で突入していったか,そのような空気が成就されたのがある程度見えてくると思う.
 最後まで読み切ったが,全体としてはやや読みにくい感のある内容だった.氏もあとがきで言及していたが,目線が一国に固定されておらず主にドイツ,日本,ソ連,米国を行ったり来たりした点と時系列順に必ずしも並んでいなかった点などがあげられると思う.しかしながら資料としては信憑性が怪しいリソースはいくつかあったものの読んでいてほうと思わされるようなものがたくさんあった.