1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

齋藤孝「「言葉にできる人」の話し方」

SmartNewsの読書タブを見ていたら出てきたので試しに購入。この手の本とか自己啓発本はいくつか読んだけどなかなか馴染めない。でも馴染めない感を確認するかのように定期的に読んでる。自己啓発系の本を読む利点は個人的にこの手の本がどうしても信じられないので自然と懐疑的に読めること。常にネガティブな面を探しながら読んで、見つかったらそれを踏まえてポジティブな面を考えて見て総合的に著者が主張していることを評価してみる。そうすると案外頭を働かせながら読める。

著者曰く、今の時代きちんとした会話ができることが重要な評価のポイントになっているらしい。こういう話を聞いた時に考えるのは、なぜいつも評価されることばかりを考えるんだろうということ。そんなに皆評価されたいと思っているんだろうか。多くの人には経験があると思う、そんな風に評価されたくない、評価して欲しいポイントはそこじゃないと嘆いたことが。安直な考えになってしまうけれど、一度発想の転換で評価のされ方を変える努力をするのも大事だと思うし。いくら時代的に会話が重視されるからといって、安易に時代に阿ることはしたくないな。序章から早速嫌な感じしかしない。

  • 「編集という視点がない限り、それらはバラバラです。」
    この一文、妙に引っかかった。文字 -> 情報 -> 編集 -> 知識 文字がコンテキストを得て情報になる。情報を編集するのは雑誌の編集者ではなくても、個人でも可能なはずだ、というか自然に誰でもやってるだろう。では個人で編集したものと、編集者(他人)が編集したものの違いはなんだろう。情報同士の関連、結びつき、、、今流行りの人工知能AIを考えた時、似ている情報を自動的に集めることはある程度の精度で現段階でも実現可能だろう。でも人が行う編集という作業はおそらくそれとはプロセス枯らして全く違っているはず。もっとなんというか似た情報だけを集めるのではなく、全体としてコンテキストが持てるようなプロセスがそこには介在しているはず。それはなんだろうか?統一性ではない、物語性のようなものが編集という作業には含まれている気がする。ではそれはプログラマブルだろうか?もちろん編集という行為がプロセス全体として物語性を含むものだと人工知能に教えれば実現は可能だろう。だがそうではなくて、編集というプロセスには類似した情報を集めるだけでなく、物語性を含むことが必要なのだと、はたして人工知能が理解できるのだろうか。。。と考えて自分が人工知能的に実現可能かどうかでこの一文に引っかかったことに気がついた。

“物事の捉え方を変えれば"って言われても頭で考えて変えられるなら誰も苦労しない。これは中途半端な思考力を身につけてしまった現在の人間のジレンマだと思っている。きっと今以上に脳が発達したならば、本能を完全に理論で制御できるようになり自らの身体からの刺激を思うがママに操って望むままの捉え方ができるようになるだろう。そうすれば、、、虚しくなるだけかもな。。。。

知らなくて言葉にできない人に対するアドバイスは以下に効率的に知識を身につけるかと知識を身につけることにどんな意味があるかだった。お手軽なノウハウではないのね。
個人的には"教養"というのは断片的な情報と情報を有機的に結びつけて新たな情報を生み出したり、自分の意見として蓄える力のことだと思っています。

知らなくて言葉にできないコメンテータも知らなくても言葉にできるコメンテータも最初から要らないだろう。こういうコメンテータの発言を公共の電波に乗せるべきではないと思う。もうちょっとテレビで発言することの影響力を著者は認識すべきだと思う。誰も知らない分野のことは一般人と同程度だなんて思ってないよ。と、本の内容とは関係のないことも載せておく。

日本人はもっと勇気を持って発言すべきとか冒頭で言ってたわりに、なぜか空気読んで同調せよみたいなこと言い始めた。この本ちょっと気持ち悪い。"みんなが喜ぶ質問が良い質問"ですって。

第二章はとても気持ち悪かった。こういう話し方をする人とは話したくないなという人物が出来上がるノウハウの紹介だった。この本にしたがって実践すれば画一的な面白みのない人間が量産できるだろうな。会話が続かなくて黙ってしまう人は堂々と黙っていればいいと思えてきた。

とてつもなく不器用でもいいから本気で話してる人とだけ話せればいいや思ってしまった。

  • 読後感
    読んでいて途中から気持ち悪くなった。後半からは飛ばし読みで概要だけでも十分だった。この本に描かれている話し方で良いのなら、我々現代人は他人を如何に稚拙に評価してしまっているかをもう一度よくよく考える必要があると思う。今の状況を現実と捉えた上でそれに迎合するよう促すこの本からは反面教師的な意味での教訓以外に得られるものはほとんどなかった。こんな話し方を身につけて人に評価されるぐらいなら最低の評価でいい。一面だけを観て人を評価することが如何に危険なことであるかを痛切に感じさせれてくれる本だと思った。