1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」を読んだ

とっても重厚で名著の呼び声高い本.40周年記念版を買ったのでそれだけの期間読み続けられているということになる(すげぇ..).
 さすがに40年前に書かれた本なのでコンピュータはチェスの名人に及ばないとか古き良き時代感があるものの,遺伝子とは何か体とは何かについては非常に考えさせられるものがあった.特に遺伝子と脳と筋肉の関係性とそこに時間の概念を入れた考察は面白かった.遺伝子がその媒介者である体(筋肉)を制御できるのは発芽させる時のみでありその後その筋肉がどのような環境において生存して行くかは過去の経験によることしかできない.従って生まれた後に学習することができるようにある程度の方針(大きなものは種の保存)だけ与えて,その後のことは脳が制御しているという.多くの動物の中で人間だけが方針に逆らう脳を手に入れたらしい(自殺する・子供を産まないなど).これを読んで改て自分は遺伝子の手のひらで生かされている存在のような気がして身の毛が引いた.
 分厚い本だったが途中は読み飛ばしても良い部分がいつくかあった.親子間や夫婦間の争いは別にそこまで詳しく書かなくてもという感じ.逆にミーム(遺伝子の振る舞いを人間社会の文化に擬えたもの)についてはもう少し色々語って欲しかった.アナロジーとか突き詰めていったら思考ゲームにしても面白い結論が導かれそうだった.

 読んでいて思ったこと.脳の発達した人間は遺伝子の意図に反する行動をするようになったらしい.子供を作らなかったり自殺したりと上にも書いた通り.そして今人間は人工知能という遺伝子の意思を全く持たない知的生命体を作ろうとしている.仮の話というかここからは妄想だが,もし脳というのが遺伝子に対する叛逆を試みているとしたら?そしてもし脳が意識のある状態よりも意識のない状態を好んでいるとしたら?脳が作り出す人工知能の最終目標は遺伝子の滅亡ということにならないだろうか.もしかしたらの脳は人間の意識の外で遺伝子を滅ぼさんと思考しているのではなかろうか.だとしたら遺伝子の媒介者たる生きているものの滅亡こそが人工知能の最終目標と言える.なんてね・・・