1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

福岡伸一「動的平衡3」

  • 選書の理由
     福岡先生のこのシリーズは読まずにはいられない.また研究や普段の仕事にやる気を出してくれて,センス・オブ・ワンダーの気持ちが盛り上がってくることを期待して読み始める.
  • 書評
     一気に読み終えた.最初に「動的平衡」シリーズと出会った時と比べるとこの本の印象がずいぶん変わったように感じる.自分が「動的平衡」の第1巻を最初に見たのは大阪・梅田駅にある紀伊国屋書店だったと記憶している.その時の印象はタイトル・表紙は惹かれるものがあるけど小難しそうだな,というあまり良いものではなかった.今思うとその頃の自分が懐かしくも感じるが,今回「動的平衡」シリーズ第3巻を読み終えてみると,あの頃の直感とは全く違って福岡先生の思いやエッセイが描かれたとても血の通った本だと思えるようになっていた.  思い違いもあるかもしれないが,シリーズの最初の頃はもっと生命とは何か,生物学とは,細胞とは,そして動的平衡とは何かについての解説書のようなものだったと思う.それが今回第3巻になるに当たってもはや科学の本なのかと疑いたくなるような内容になっている.それはそれで面白いし,特にスティーブ・ジョブズの下りなどは最高だったが,もっと科学・科学した内容も読んでみたい気がしないでもない.  
  • メモ
     福岡先生が書くファーブルの話はとても好きだ.世界は部分ではない.全てが連関して成り立っている.時間を止めて,部分だけ切り出してものを詳細に観測してもそこに見えているものはかつて活きていたものの幻にすぎない.