1000冊の記憶

1000冊以上本を読むともう内容が曖昧になってくるのでちゃんと感想を残します http://booklog.jp/users/f_t812

「もの言えぬ時代」

  • 選書の理由
     複数の有識者の意見だったので、偏りは小さいだろうと思って試しに購入。
  • 書評
     共謀罪についての本だった。ほとんどの人が共謀罪に反対でとってつけたように賛成している人の意見が中頃に一つだけあった。それも絵に描いたようにうっすい理由で。ほぼ全員の意見を要約すると先の治安維持法と同じで、最初は一般人を取り締まるような法律ではなかったが、そのうち恣意的に解釈されるようになって政府に批判的な人間を片っ端から取り締まるようになるだろうと。きっとそうなるだろうなと思う。特に空気を読むことに敏感な日本人には相性が良い法律だろう。そうなってしまうような緊迫した世界情勢にならないことを切に願う。
  • メモ
     内田樹氏:一方的な批判ばかりで読む価値のある文章ではなかった。デメリットばかりを論って挙句の果てに"80年代のバブルは日本が主権国家としての地位を取り戻そうとしていたように思える"と妄言まで出てきた。もう少しまともな人かと思っていたがこの感情的な文ではもう二度と読むことはないかも。
     半藤一利氏:一番説得力がありもっとも読みやすい文章。感情的な文章にもなっておらず、自身の戦争体験から実際に自分が感じている危機感を率直に伝えている。

池田善昭 福岡伸一「福岡伸一、西田哲学を読む」

  • 選書の理由
     久しぶりに福岡先生の文章・思考に触れてみたくなって購入。
  • 批評
     ピュシスとロゴスという考え方について最後は時間という概念が今の自然科学からいかに無視されているかというのが腑に落ちる内容だった。ダイアローグ形式ということもあって内容的には福岡先生が理解しにくかった部分が詳細に書かれていたり、逆にすんなり理解された部分はさらっと書かれていたりとモノローグ形式に慣れている分理解に苦しむ部分もあったが、福岡先生の著作を何冊か読んでいた分理解はできたと思う。  科学における同時性、いわゆる分解と合成だ同時に起こって、一見静的に見える部分も実は動的に平衡状態にあるというのは今の科学の限界が見えた時に次のヒントになるものだと思ったし、今の仕事にも活かしていける考え方だと思った。  ただ福岡先生の対話相手の喋り方が宗教の信者っぽくてもう読みたくない。
  • メモ
     西田哲学は読んだことがないが、プロローグを読むだけで福岡先生の考える動的平衡と西田哲学には生命とは何かという考え方に非常に近いものがあることがわかる。
     ”林檎を理解するには分析的に見ていくのではなくて林檎そのものを経験する”見て、触れて、食べて、嗅いでとかそういうこと?肉体的経験みたいなことかな。林檎を経験した環境、その時の自分の状態までも含めて体験せよと。文字や絵、知識以上のものを?
     ”生きるという行為に必要な「先回り」”この考え方はアルゴリズムに応用できないだろうか。

森博嗣「ペガサスの解は虚栄か」

※ネタバレ注意

  • 選書の理由
     森先生のこのシリーズは無条件購入。このシリーズは人間とは何かを色々考えさせられるので非常に面白い。

  • 書評
     人工知能いが希望的観測をして演算から導かれる事実を見誤る。それを修正するために他の先輩人工知能が指導を行う。学習の速度、時間感覚が違うだけでこれもはや人間に近い。人工知能の行き着く先は今の人間とは時間サイクル、時間の価値観が違うだけで他の点では人間そのものになるのではないかと思ってしまう。そういった意味では結局人間が産み出せるものなど所詮人間のコピィに過ぎないのではないだろうか。

  • メモ
    • 「わからないのは、悪い状態ではない。」
    • 「ラビーナのロボットのこと。あんなことしなくても、彼女は立派に生きているのに」
    • "言いたい言葉はあったが、言わなければいけない言葉は一つも見つからなかった。"
    • 「その素直さが、私は好きです。」

稲盛和夫「活きる力」

  • 選書の理由
     稲盛氏のこの手の本は仕事に対するやる気を思い出させてくれる。仕事に対するひたむきさ・誠実さについてこれだけ真剣に向き合っている人がいるということだけで十分な励みになると思う。今回もそんな内容に期待して購入。
  • 批評
     鹿児島大学での稲盛氏の講演がベースになっている本なので氏の他の著書にも書かれている内容と重複する部分が多い。学生時代や最初の就職先での苦労話などはいずれも他著書で読んだことがある。それでもこの著書で特に印象に残ったのは、誰よりも努力して仕事に打ち込めという時代に逆行する教えだった。氏の言う誰にも負けない努力と、昨今流行っているライフワークバランスなどと言う言葉は真っ向から対立するものだと思う。今更書くことでもないが、私は稲盛氏の方を支持したい。それなりに働いてそれなりに人生を楽しんでいる人間も悪いとは思わないが、私としては何かに一生懸命打ち込んでいる人間の方がはるかに魅力を感じる。仕事も余暇もそれなりの人間はどうしても薄っぺらく見えるし、人生を”こなしてる”ように見えてしまって、予定調和的に時間を過ごしている ように見える。そんな人生を送るよりは、氏の言うように仕事を好きになり、誰よりも努力して、一生懸命生きる人生を選びたいと思った。
  • メモ
     稲盛氏の言葉は重みがあってやる気を鼓舞してくれる。常に読んでいたい。

伊坂幸太郎「ホワイトラビット」

※ネタバレ注意

  • 選書の理由
    伊坂作品は無条件購入
  • 書評
     時系列が飛んだり、やたらと説明文が多かったのが印象的だった。余計な話が多い方が物語として厚みを増すのはその通りだと思うけどわざわざ記述してくれんでも良いよ。
     内容としてはいつもの伊坂作品通り誰が主人公なのかわからないぐらいに視点がコロコロ入れ替わってそれぞれに物語があって面白かった。だが夏之目さんのストーリィだけはちょっと重かった。物語とはいえ心にズンと響いて来るものがある。連休最終日の黄昏時に読むものじゃない。
  • メモ

石田衣良「裏切りのホワイトカード」

※ネタバレ注意

  • 選書の理由
     このシリーズは無条件購入。
  • 書評
     面白かった。いつも通り一日というか半日で読み終わってしまった。最近のこのシリーズを読むと、社会問題をほんの少しだけ実体験に近く、浅く、広く知ったんだろうなという感覚になる。小説を読んだという感覚よりも日本のテレビや新聞では報道されることのない実情を少しだけ知ったんだろうなという感覚になった。
     何となくではあるが、最近の傾向としては、内容よりも主題の選び方に重きが置かれているような気がしている。主人公の動機や解決に至るプロセスについても昔の作品の方が緻密・綿密に描かれていたような気がする。もしかしたらそろそろ最初の頃の作品を読み返した方が良い時期に来ているのかも。
  • メモ
     物語の中に出て来るカフェとか何となく観に行きたくなるのは何で何だろう。きっとヒマだから。

東野圭吾「マスカレード・ナイト」

※ネタバレ注意
* 選書の理由
 東野圭吾氏の新刊は無条件で買い。

  • 書評
     LGBTが主題だったのかと思いきや、最後は警察批判だった。今回は主人公の閃きとかではなく物語が平穏無事に終わったのはヒロインの習慣だった。まぁシリーズ物ならこういう回があってもいいか、という感じで人にオススメできるレベルではないかな。

  • メモ
    前作までの登場人物のやりとりをおぼろげにしか覚えていないので、もう一度読み返したくなって来る。